横浜国際学会再構築への提言

2023年12月2日

はじめに

横浜国際学会(YISA)は、1986年創設の明治学院国際学部の創設30周年を契機とし、同学部教授会の承認を経て創設された学会である。

設立の目的、事業は規約にて以下の通り定められ、主に在校生の学費より徴収している学会費をベースとする基金と、愛校(国際学部)精神に富む教員、卒業生、学生の運営委員の献身により支えられてきた。

〔目的〕
本会は、明治学院大学国際学部および大学院の在学生、卒業生、教職員相互の協力・ 協働、および相互交流を促進することによって、在学生の自主的学習・研究活動の活性化 と、卒業生の社会諸分野における活動の充実を図り、ひいては学部創設理念として掲げる 平和な世界の建設に貢献することを目的とする。

〔事業〕
本会は前項の目的を達成するために次の事業を行う。

(1)同窓ネットワークの管理運営 (2)講演会・研究会・シンポジウム・研修会等の開催 (3)会員相互の交流と親睦 (4)広く社会と国際学部をつなぐ教育研究企画 (5)その他、本会の目的のために資する活動

6年間の活動を踏まえ、今後のYISAの活動意義、展望について改革案を提言し、教員、学生、卒業生をステークホルダーとする各当事者を交えた広範な議論を求めることを目的とするものである。

 

1. YISAの価値について

2022年12月の年次総会後、学部創設40周年へ向けたYISAの在り方について運営委員会で 協議を重ねてきたが、諸々の課題はあるものの、明治学院大学同窓会、明治学院同窓会、 明治学院大学校友会の存在とは別に、YISAは存在すべきであるとの見解が運営委員のコンセンサスとなっている。

その理由は、YISAが単なる学生支援機能、同窓会機能としてのみならず、リユニオンでみられるシンポジウムの開催など学術的な要素を内包している点で独自性があることを確認し た。他方では創設当時に比べ本学部の地位(価値)が相対的に低下していることに対する危機感が存在し、教員、卒業生、学生が一体となり魅力ある学部づくりを目指し、学生離れに歯止めをかけ、選ばれる明学国際学部の復権を目指すべきとの意見がある。その中でYISAが 果たすべき役割もあるとの認識があり、YISAの存在や継続の意義がそこに見出されている。

これらの問題意識や課題は、YISAの運営委員間では相応に共有されているが、教員、学生、卒業生という各ステークホルダーの間では十分に共有されているとはいえず、特に教員 は、自らの職場の維持向上を図るという点において、自らの問題であるはずだがYISAへの関与が少ない(厳しい言葉でいえば「無関心」)。そのため一部の限られた教員にしかYISAの存 在と活動は共有されず、学生に対し、無関心を是としない教育を施しているはずと理解する中では残念な状況である。他方、YISAへ参画し、運営委員会での議論に積極的に参加している教員の中には、卒業生とのネットワークを通じ、校外ゼミとして、企業訪問を果たすケースも存在する。

2023年10月現在で、専任教員38名中会費納入済みは15名、約4割に止まっている。学部長 をYISA会長とし、運営委員に2、3名の教員を任命されているが、学部教授会の関与は多くの 場合オブザーバーのような機能に留まっているように見受けられる。大学の業務の劇的な増 加や、学部創設期からの第一世代は退いて、新しい世代の教員が増えている環境のもとで、 現役の教員が古い卒業生と連携することなどが難しいことは理解できるが、在校生と卒業生を結びつけるブリッジとしての専任教員の役割は何にも増して重要である。その意味で学部長を会長としていることもあるので、さらに在校生、殊に新入生などに対して、YISAの存在と活動の意義をぜひとも周知して頂きたい。

6年間に及ぶ活動の結果、YISAをきっかけとして卒業生とのネットワークを得た学生が希望 の会社に就職した実績もある。 教員、学生、卒業生のネットワークが強化されることにより、 様々な可能性を秘めていることは、僅かな実績でも、それが実際に起きたことで証明されていると考えられる。

本論では、YISAは存在すべきである前提に立ち、今後の改革案を提言していきたい。

 

2. 改革へ向けた反省と課題
(1) 組織として顔がみえていない=顔が見える組織に

YISAが何なのかをきちんとステークホルダーにきちんと伝えて切れてこなかったのは、誰がやっている組織なのか顔がみえず、またYISA総会でも形式的な活動、会計報告に留まったため、認知が高まらなかった。

また、事務局と各事業の執行が一体化し、事務局の負担が大きかったことは否めず、改めて組織の改変(組織化)を検討する必要があるものと思慮される。具体的には、例えば、学部長兼任の会長職を補佐する、副会長などの設置である。 副会長職は卒業生および在校生から各1名程度を選出して、運営委員会並びに 総会の実質的な担い手を務める役割を想定している。副会長職の設置は規約の 変更が必要となることから、2024年12月2日開催のYISA年次総会で規約の変更と副会長職の選任ができればと考えている。

(2)  情報発信(広報)の一本化 本学部からの対外情報発信が散逸しており、メディア再構築が必要である。(発信情報元の整理。例:国際学の扉の拡充等) YISA:国際学部の扉、Facebook/国際学部:Instagram、X(旧Twitter)、HP、Facebook

(3)  YISAと本学部の関係の再構築

学生はYISAの重要な構成要因であり且つ、運営委員等の担い手でもある。卒業 生など学外と学生の間のネットワークを構築する必要があり、YISAと本学部の関 係が安定的に維持される必要があり、その仕組みが必要となる。

国際学部との関係の再構築の具体的なアイデアを例示的に提案したい。

第一には、86年度に始まる1期生の送り出し以来40年近い卒業生の中には、研 究者や、ジャーナリズム、職業的な編集者や作家、あるいは市民団体や公的機 関運営に従事するものなど多岐にわたって、情報の発信に携わっているものが 見られる。その形態も多様であるが、印刷媒体などに絞って、「卒業生のライブラ リー」を構築してはいかがだろう。近々にはYISA企画のオンライン読書会も発足 したが、卒業生の仕事を改めて捉え、在校生はじめ教職員・関係者にも共有する 場所を設けたい。あるいは、著者その人に戸塚まで来てもらって自著を語る場な ど設けることも望ましい。

第二には、退職教員について。この夏には森井真元学長(文学部)が逝去された が、国際平和研究所では、cafe de PRIMEにおいて森井先生の仕事やインパク トを振り返る連続レクチャーが催された。先生は国際学部生みの親の一人であっ た。あるいは最近『多田道太郎ー文学と風俗研究のあいだ』(sure)が刊行された が、2名の卒業生が関わっている。こうした創設期のfunding fatherたちによって 後年の人生の大きな指針を与えられたとの声をよく耳にする。40年近くを経て創 成期のメンバーは世代交代したが、そのインパクトを節目ごとに確認することで 「新しい国際学部」構想の一助となれないだろうか?これらはのちに触れる卒業 生とのネットワーク構築にも強く結びつくべきものである。

第三には、YISAとは独自に卒業生在校生が共同して参加している活動との連携 である。舞岡公園内のNPO「舞岡・やとひと未来」の元で稲の栽培を中心とした 農業体験を30年にわたって続けている「土ん米」などは、活動の連携を行う大き な意義があると考える。これは一例であるが、こうした活動の幅を広げる試みを 模索すべきであろう。

YISAは、明治学院大学同窓会、校友会とは独立した組織ではあるが、様々な連 携を行うことにより、各々の活動意義に相乗効果を生むことが期待される。近年には、明治学院同窓会と、大学校友会の二重構造を解消して、一本化(組織名: 学友会)に向けて進行中である。国際学部の組織であるYISAはこうした大学ある いは学院全体の組織改編に際して、どのような立ち位置を占めるのか、どのよう な機能を果たすかについて検討が必要だろう。

(4)  在籍財政基盤の安定

学会費の大半が学費とともに源泉される学生からの会費により賄われていると 言って過言ではない。より活動を充実されるために教職員、卒業生の有償会員を増やす必要がある。

これは同時に、単なる寄付ではなく、学生以外の有償会員にとりネットワークの活 用等有意義なメリットを還元する必要があり、それに耐えうる、企画や事業が必 要となるものと思料される。つまり、イベントへの参加が、会費増と会員のメリット につながるよう工夫が不可欠となる。

これまでの間に、ワイン部などの試みがなかったわけではないが、運営方法(学 生参加者への対応)や広報が十分ではなく、十分機能したとは言えず、卒業生向 け企画については再考の余地がある。

(5)  人的データーベースの構築

当学部の卒業生は、90年3月の1期生の卒業以降10000人以上を数えるが、そ の後の動向を学部あるいは大学全体としてきちんとフォローできているとは言え ない。

人的データーベースが充実すれば、教員、卒業生、学生が必要な情報等にアク セスしやすくなり、特に社会と本学部の結びつきが強くなればなるほど、本学本 学部の社会における存在価値は向上するものと思料される。

また、今後のYISAの永続的な活動の担い手の維持においてもこのデーターベースの構築は重要と思われ、その構築手法の検討は急務と言える 。

各々のステークホルダーから見たデーターベースの価値の例は以下の通り

(1)  教員:学問の面において、社会の実態へのアクセスや学生の就職支援

(2)  学生:就職希望の学生にとっては、会社、社会へのアクセスのゲートウェ イ進学希望の学生にとっては、大学院へ進学した先輩へのアクセス等

(3)  卒業生:1) ビジネス上の関係構築 2) 学び直しの機会提供 3) 卒業生 間の交流による新たな価値創造(まさにYISAそのもの)

3. YISA改革へ向けた予算措置 本年12月1日より始まる2024年度YISA予算において、一連のYISA活動の見直しにかかる

予算を新たに付与することを提言する。

1.  専任スタッフ強化費(人件費) :750千円

2.  発信メディア一本化調査費用 :100千円

3.  本学同窓会との連携費用:150千円

4.  卒業生有償会員増対策 :200千円

5.  YISA設立10周年事業予算積立:500千円

 

以上総額170万円を追加予算とし申請したい。また、1~4については予算間において運営委員会の承認と総予算の範囲内で付け替えを可能とすることとしたい。

 

まとめ

これまでの活動を振り返り学部創設40周年へ向け議論を重ねてきたが、何のために多忙な社会 人メンバーが時間を割きYISA活動を担っているか?それは一重に、自らの為ではなく、明治学院 大学国際学部を応援したいとの思い一点からである。決してYISAは運営委員等関与するメン バーのサークル活動的な意味合いは微塵もないと断言できる。なぜならば、社会人メンバーは、 現役で社会、会社の中軸を担う者、子育てど真ん中の世代メンバーであり、その多忙を極めてい る時間の間隙を縫って活動を支援しているメンバーばかりだからである。 卒業生メンバーはそれでも自分が巣立った学び舎は、発展し、良くなってほしい、学生を応援した いとの思いがあるからボランティアでも時間を割いてきているのである。 それ故に、まさに現役の教職員や学生にはYISAには関心を持ってもらいたいと願い、また社会人 に対しては、いつでもまた学び舎に戻ってくることができる場所として位置付けたい。 この6年間の活動を通じ、多くの卒業生や現役学生と交流をもったが、民間企業で活躍している 人、国際機関で活躍する人、林業に従事する人、作家になった人、実に多様な人材の宝庫である ことを感じることが出来ている。そして、こうした出会いの繋がりが、当学部が歩んできた時の流れ を繋ぎ、仕事の相談や、就職活動、ゼミの活動支援などに繋がっていると言える。 さて、もし6年前にYISAが設立されていなかったらどうだっただろうか?このような当学部関係者 が交差する場所はなく、その接点を求めようにも求める場はなかっただろう。そして、折角入学し てきた多様性に満ちた学生、教職員、そして当学部が輩出してきた社会人が交わる場(=お互い に刺激を受ける場)もなく、就職相談も、ゼミ生の企業訪問も出来ていないだろう。また、一部のゼ ミでみられるゼミ会、ゼミのOB会のような縦組織で卒業生間の交流はあってもそれ以上でも以下 でもなく、ゼミの教授が鬼籍に入り行き場を失った卒業生もいる。 もう一度問いたい。YISAが存在しなければどうであったか?ゼロに何をかけてもゼロであり、学 生、教職員、卒業生は散逸したままであり、そこに人間が交差することにより生まれるポジティブ な効果は望むべくもない、しかし、既にYISAは存在しゼロではない。6年間事業を継続してきた歴 史と実績からも、今後のやり方次第で将来を展望できるものと確信している。 YISAの存在意義の本質は、「学生×教職員×卒業生=価値創造」であり、この価値創造が、各々 のステークホルダーは勿論のこと、国際学部、明治学院大学、社会の発展の一助になることを目 指していければと考えている。 かかる意味において、学生、教職員、卒業生がYISAを自分事として捉え、上手に活用できるよう な組織となるように改善をしていきたいと考えておりますので、引き続きのご理解とご支援、そして 積極的な関与をよろしくお願いします。

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2023年12月2日

YISAを考える会 座長 竹尾茂樹

 

 

*提言について、発出者名を訂正しました。 2024年4月25日事務局

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