ご挨拶

 

国際学部学部長・横浜国際学会会長 森 あおい

 

明治学院大学国際学部に着任して10年目の節目を迎える年に、日本初の「国際学」を柱とする学部として1986年に創設された国際学部の学部長、そして横浜国際学会(YISA)の会長という大役を仰せつかることになり、身が引き締まる思いです。栄えある伝統を持つ国際学部やその卒業生の方々を中心として運営されるYISA発展のために、微力ながら貢献できればと考えています。

YISAの会員の皆様には、平素より会の運営に関して多大なご支援とご協力を賜っておりますことを、心から感謝申し上げます。特に、新型コロナウィルス感染症の拡大とともに対面での活動が制限される中で、オンラインを駆使してキャリア支援などの在学生のためのイベントを継続的に開催していただいたことは、在学生にとって実践的な就職活動の情報を得るばかりでなく、多方面でご活躍なさっている頼もしい先輩方との出会いを通して国際学部生としてのアイデンティティを構築する機会にもなっていることと思います。

国際学部は、「現代のグローバル社会の諸相を理解し、世界の平和と福祉に貢献する人材の育成」を教育の目標に掲げています。これは、国際学部が、多様性の尊重と他者との共生に根差した平和構築への貢献をめざしていることを意味します。学部創立以来、主流社会から排除された「他者」の存在に目を向け、寄り添うことが、国際学部の教育の特徴の一つだと思います。

私の専門はアメリカ文学・文化研究で、特にアフリカ系アメリカ人女性として初めて1993年にノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスン(1931-2019)を研究対象としています。黒人女性としてさまざまな抑圧と闘ってきたモリスンの研究は、人種、ジェンダー、階級の違いから差別を受けている他のマイノリティ・グループの研究と密接に繋がっています。歴史を振り返ってみると、人類は戦いを繰り返し、権力闘争の結果、差別の構造が作り上げられてきました。しかし、主流社会から排除されて、マイノリティの立場に追いやられてきた人々も、検閲を逃れて様々な形でナラティヴを紡いできています。それらを掘り起こし、他者排除の構図を見直すことが私の研究の目的であり、また、平和を希求する国際学部の教育目標とも繋がっているように感じています。

最近、コロナ禍の副産物として普及したオンラインミーティング等のお陰で、国際学部を巣立った卒業生の方々とも連絡を取る機会が増えました。実際に社会でご活躍されるご様子を垣間見て、多様性を尊重し、他者との共存を図る国際学部の教育理念が社会人になっても忘れられずにDNAに刻み込まれていることを感じます。国際学部の平和追求の理念を共有する卒業生や修了生と在学生、教職員の密接な連携が、国際学部そして横浜国際学会のさらなる発展に繋がることと確認しております。

新型コロナ感染症が1日も早く終息し、平穏な生活に戻れる日々を願いつつ、皆様に対面でお会い出来る日を楽しみにしております。