3つの異なるゼミに所属する学生(17KS/18KS)に、卒論の執筆経験についてお話しを伺いました。

自己紹介と卒論のテーマ

白井)戸谷ゼミに所属している白井宏侑です。
戸谷ゼミでは、「ヨーロッパ地域」と「近代史」の2つのテーマについて学びます。
私は対象地域にブータンを選び、「ブータンの情報化」について卒論を書きました。

 

北川)紺屋ゼミに所属している北川楓です。
紺屋ゼミは、オセアニア地域をテーマに学びます。
私の卒論のテーマは「カヴァ・バーにおける商業化」です。
カヴァ・バーはメラネシア地域にあるヴァヌアツ共和国の文化です。

私はヴァヌアツ共和国における嗜好品の商業化を中心に、カヴァ・バーをどう理解するかをまとめました。元々伝統文化に興味があり、文化が商業化される過程で生まれる葛藤に興味を持ったので、このテーマを選びました。

 

豊岡)森ゼミに所属している豊岡真優です。
森ゼミでは、アメリカ文化について学んでいます。
私は特に、「なぜアメリカでは人種差別をきっかけに大きな運動が起こるのか」について興味を持ったので、1960年代のアメリカを舞台にした映画『グリーンブック』を中心に現在までの人種差別について卒論を書きました。

 

卒論を書き始めた時期とテーマ決定までの経緯

白井)私は4年生の5月6月に構想を固め、本格的に卒論を書き始めたのは9月頃です。
テーマを選んだきっかけは、1年生の時にスタディツアーで行ったブータンでの経験です。
ブータンの秘境の村でさえ携帯電話や電子端末が利用されている様子を見たことで、デジタル化・情報化が進んでいることに対してツアー参加者の中で議論になりました。
この経験は、卒論のテーマ決めに直接繋がったと感じています。

 

北川)私は4年生の4月に取り掛かり始めました。
テーマ決めのきっかけは、3年生の時にゼミで読んだ『From a Native Daughter』という本です。この本のテーマは、「ハワイ先住民の観点から移民によって文化が商業化されていることに対する批判」であり、私はこの本を通じて、文化の商業化に興味を持ちました。
 

私は、「ハワイに関する問題は文献が多いために、卒論としてまとめにくい」という印象を持っていました。
そこで私は、「商業化」というテーマは変えずに、ハワイより小規模で、私の研究を突き詰めることができる地域を探しました。その結果、ポリネシアよりもマニアックなメラネシア地域にあるヴァヌアツ共和国を調査地に決めました。

 

豊岡)私がテーマを決めたのは3年生の1月頃で、実際に卒論を書き始めたのは、4年生の9月頃です。私はアメリカ留学中に、ロードトリップに興味を持ったことがきっかけで映画『グリーンブック』を見ました。それを元々興味のあった「人種差別」と関連させ、卒論の軸にしました。

 

▽テーマの設定時期は?

白井)戸谷ゼミでは3年生の春学期に研究計画書を提出するのですが、その時には卒論の主軸となるテーマを決めていました。
3年生の秋学期には、ゼミの中で中間報告会があり、4年生の春学期は公開の中間発表会、4年生の秋学期には最終報告会がありました。全部で3回報告会があり、少しずつ内容を固めていく感じでした。
戸谷ゼミは最初から卒論に重きを置いているゼミで、2年生の秋学期の最初にレポートの書き方を学び、3年生の春学期からは卒論を意識した授業内容でした。

 

北川)元々、紺屋先生はゼミを持っていなかったため、スケジュールは決まっていませんでした。私がテーマを決めたのは4年生の4月。第1稿の締切は夏でした。

 

豊岡)森ゼミは2年生の秋学期から始まり、3年生まで文化史の本を最初から最後で読み、その中からテーマを決めます。私は授業や留学の経験から人種差別のテーマを選びました。

 

大変だったところ

北川)コロナウイルスの影響で、調査地へフィールドワークに行けなかったところです。
現地住民から詳細な話を聞いたり、寄り添えたりできるのはフィールドワークならではであり、文献だけでは難しかったです。
また、みんなが知らない情報を使用するため、出てくる言葉の説明など本来の内容に関係ない部分に時間を割かないといけないことも大変でした。

テーマや地域がある程度周知されているものの方が書きやすいと思います。

 

白井)私は海外の文献を探すことが課題でした。
ブータンの文献は日本語のサイトではなくて、英語が主体でした。
インターネット上で最近のデータベースを探した時は、欲しいと思っている情報がなかったため、論文検索は大変でした。
 また、本をいくつか読みました。ただ、その情報を整理して文章としてまとめ、書き出すまでの作業は大変でした。

北川さんが言っていたように、情報化の歴史や経緯を書いたのは良いと思います。その後の展開や論証などにもっと早く取り掛かりたいにも関わらず、実際は秋までそこに辿り着かなかったのが大変でした。

 

北川)考察とテーマ、先行研究の理論を全部精緻化した後に、やっと自分の話ができました。

 

豊岡)私は映画を中心にしたので、論文の数があまりありませんでした。
『グリーンブック』は最近の映画なので、批評はネット媒体などに多く、信憑生に不安はありました。私の場合は、問題が大きく広く周知されているからこそどこに着地するか、自分の意見を入れるのかが難しかったです。
さらに、社会構造や、歴史の中で積み上げられてきたものに対して、当事者でない自分の意見をどのように落とし込み、結論づければ良いのかも難しかったです。

 

白井)私も日本にいる立場からブータンという国の情報化を扱うということで、どういう立場から記述したら良いのかという点が悩みどころでした。

 

北川)私は一番最後の章に、他者の歴史や文化に第三者の私が書くことの是非を問いて、論文を閉じました。
 

白井)また、アンケートにも苦労しました。
フィールドワークに行けなかったので、Facebook上でアンケート調査をしました。
ブータンの知り合いや友人45人ほどにアンケートを取りましたが、特に1人1人にアンケートを送り、答えてもらう工程が大変でした。しかし、生の声を自分で直接聞き取ることができたのは、とても意味のあることでした。

 

北川)私は理論論文に近い形式を取ったので、アンケートは取りませんでした。
理論をとことん詰め、先行研究の批判をして、違う理論を用いて論証していく感じです。

 

白井)私の論文はアンケートを含め、調べたことから何が言えるのかというスタイルの論文でした。理論的というよりは調べたことをまとめて、そこから分かったことを述べた論文になりました。

 

豊岡)映画はその背景を説明することが必要で、全体的に映画の説明をしつつ、自分の意見を入れる感じでした。基本的に文系では、テーマに対する背景の説明と自分の意見を書くのがセオリーという印象です。
実際に、ゼミの中でアンケートを取っていたのは1人だけでした。その人も、留学中に現地の人に聞き取り調査を行なったので、結構イレギュラーだと思います。

 

北川)ゼミによって収集する情報源が違います。私のゼミは本か論文でした。

 

ゼミ内での卒論作成の様子を教えてください。

白井)戸谷ゼミではグループ作業を重視していて、最後までそれを続けていました。先生はいつも「個人」と「グループ」と「ゼミ」の「三重の輪」での作業を頑張って欲しいとおっしゃっていました。

また、「自分のテーマを深めることは誰にでもできるけど、他人が興味を持っているテーマを聞く力は尊い」とおっしゃっていて、実際に3回目の報告会の中で、他の人が取り組むテーマについて話し合う時間がありました。自分を相対化し、比較することは、卒論を執筆する上で参考になりました。

 

北川)紺屋先生ゼミは2人しかいなかったので、毎回進捗を画面で共有し、見てもらう形式でした。報告会という形式ではありませんが、毎回先生にチェックしてもらっていました。

 

豊岡)森先生のゼミは人数が多かったので、スケジュールが明確に決まっていました。
四年生の最初は情報の集め方や書き方を学び、秋学期以降は月に1章ずつ提出という感じです。月に1回1つの授業で三、四人が報告しディスカッションすることで常にみんなの進捗状況を把握していました。
作成のスケジュールがしっかり決まっていたので、管理が苦手な私にとっては良かったです。
 

白井)報告会はありましたが基本的には、個人でのスケジュール管理が求められていました。少なくとも1回は、途中でも卒論の提出を求められていました。私は、二回提出しました。

 

北川)授業がない週でも土日に提出して、添削してもらうこともありました。
二週間程度の冬休み中に、3回ほど紺屋先生とやりとりをしました。
私は執筆に行き詰まったら、その都度先生にアドバイスをいただき、進めていきました。
 

豊岡)私は、第1章を提出して添削が返ってくるまでの間に2章に取り組むという形でした。
これを繰り返し12月の終わりに全部返ってくる感じです。
森先生ゼミは提出回数が多いゼミですが。途中で書き方に悩んだ時も気軽に相談しやすい環境でした。

 

北川)紺谷先生は「いつ頃の提出がいいかな?」と相談してくれて、提出期限も柔軟に対応してくださりました。

 

豊岡)森先生はゼミを長くやっていて経験も豊富なので、頼もしかったです。

 

白井)戸谷先生のゼミは10人ほどで、グループ作業もあるので、仲間に頼ろうと思ったら頼ることができる環境でした。反対に、自分一人で黙々作業することもできる自由度の高いゼミです。伸び伸びと卒論を書けたので、自分のスタイルにあっていました。
 

北川)ある程度締め切りがあったのは指標になってやりやすいし、先生に細かく質問できる環境もよかったです。行き詰まったときに先生のネットワークに頼ることもありました。

 

こうした方がいいよ!

白井)テーマ選びは重要です。
興味や好きという気持ちも大切ですが、「卒論としてまとめあげられるテーマか」という点を意識しておくと書きやすさは変わってくると思います。

 

北川)情報を蓄える作業は早めにしておいた方がいいです。
海外の論文や古典的な本など読みにくい本を避けると、その先に進めなくなってしまいます。情報を蓄える作業を早めにしてくと自分の考えがもっと広がると思います。

 

豊岡)心が折れないように好きなものに取り組むのが大事かなと思います。
あとは、自分でスケジュール管理をすることです。
9月から1ヶ月で1章くらいのイメージを持っておくと12月に焦ることがないかなともいます。

 

白井)情報を蓄えることも必要ですが、情報を収集しつつ、早い段階から書き始めることも大切かなと思います。

 

北川)理論的な本や古典的な本を読む時は、その本の書評を読むと大まかな内容を掴みやすいのでおすすめです。その後に、本を読んでその中から大事なところを使うという感じでした。

 

白井)本を全部読むより、辞書をひく感じで読んだ方が効率は良かったです。

 

後輩へのメッセージ

豊岡)どうにかなると思う!卒論かかないと卒業出来ないのでやるしかないと思えばできる!

北川)気負わないで大丈夫!ちゃんとやることをやれば大丈夫だよ!

白井)他の課題と一緒で、卒論を書き終わった後のことを考えると気が楽だと思います。