取材日: 2025-03-20
取材者: 蓑田 道
今回は、21ksの松田実久さんにお話を伺いました。松田さんは、学生生活のサポートを行う「キャンパスコンシェルジュ」として活動する傍ら、性感染症の予防啓発を目的としたコンドームの無料配布プロジェクトを企画し、実現させました。多様な文化や価値観に触れる国際学部での学びが、どのように彼女を社会問題へのアクションへと突き動かしたのか。その思いと将来の展望に迫ります。
▽明治学院大学国際学部国際学科に入学した経緯を教えてください。
正直に言うと、当初は「この学部に入りたい」という強い理由があったわけではありませんでした。高校時代、将来について悩んでいる時期に、父親がいくつかの大学をピックアップしてくれて、その中に明治学院大学がありました。大学の資料を見ていた時に、国際学部の留学協定校にエジプトの大学があるのを見つけたんです。私は小さい頃からエジプトの文化が大好きで、美術展なども必ず行くほどだったので、留学協定校にエジプトの大学があると知って「行けるの? 面白そう!」と思ったのが最初のきっかけです。
AO入試の準備を進める中で大学について詳しく調べているうちに、ボランティア活動が盛んな大学であることも知り、ますます関心が深まりました。
▽大学ではどのような活動に取り組みましたか?
様々な活動に参加しました。特に力を入れたのは、キャンパスコンシェルジュ(CC)としての活動と、大学内でのコンドーム配布プロジェクトの実現です。
▽キャンパスコンシェルジュでの活動について教えてください。
キャンパスコンシェルジュ(CC)では、4年間活動していました。「明学生による明学生のための、より良いキャンパスライフ」の実現をモットーに、学生生活に関するさまざまな相談に乗ることが主な役割です。
私が主に担当していたのが「広報」です。普段からSNSをよく利用していたこともあり、InstagramやTwitterの運用を担当していました。食堂のランチ情報から、コピー機の仕様変更、大学からの公式なお知らせまで、学生が「これを見ていて良かった」「ためになった」と思ってもらえるような情報発信を心がけていました。
私自身、入学当初は「何が分からないのかも分からない」状態で、信頼できる情報をどこで得ればいいのだろうかと悩んだ経験がありました。だからこそ、後輩たちが困った時に気軽に頼れる存在として、学生目線で情報を発信していきたいという思いがありました。学生と大学職員の「橋渡し役」として、少しでも学生の不安を解消できる存在を目指して活動していました。
▽コンドーム配布プロジェクトについて教えてください。
コンドーム配布プロジェクトは、大学3年次の時に初めて実施し、4年次でさらに発展させた活動です。元々は、ボランティアセンターの「ボランティア・サティフィケイト・プログラム」を活用したのがきっかけでした。これは、2年間ボランティア活動を行うと単位に認定される制度です。私も登録はしたものの、コロナ禍の影響により、当初は活動を進めることができませんでした。
その後、ボランティア・サティフィケイト・プログラムのコーディネーターの先生に声をかけていただいたことをきっかけに、ボランティア活動を再開しました。担当の先生に相談したところ、新宿二丁目にあるコミュニティセンター「akta(アクタ)」で行われていたコンドームの補充ボランティアを紹介され、とても面白い経験になると思い、参加することにしました。そして、国際学部の「インターンシップ講座」を履修した際にも、このコミュニティセンターでインターンシップを経験しました。
ボランティアやインターンシップを通じて運営側の立場を経験したことで、性感染症を予防する必要性をより強く感じるようになりました。特に、コンドームが性感染症予防や予期せぬ妊娠予防のために重要であるにもかかわらず、日本では「性」に関する話題が話しにくい現状があることに問題意識を持ちました。大学内でコンドームを気軽に受け取れる場所があれば、話しにくい性の話題についても考えるきっかけになるのではないかと考え、大学内でコンドームを配布する企画を考えました。
大学内で配布を実現するには様々な課題がありましたが、「世界エイズデー」をきっかけに配布を実施しようということになりました。コミュニティセンターaktaの方に講演をお願いし、そのイベントの配布物として配ることで、学生が手に取りやすくなると考えました。この方法で、無事に配布することができました。
大学3年次の最初のイベントでは8人が参加し、手応えを感じました。ゼロからイチを形にする経験は、大変ではあったものの面白くもあり、大きな達成感につながりました。
4年次には、友人たちと協力し、もう一度やってみたいという話になり、ボランティアチャレンジ制度を活用して再挑戦しました。過去に健康支援センターにコンドームが置かれていたという実績を知り、健康支援センターとボランティアセンターに設置交渉を行い、計200個の設置が実現しました。
さらに、学生が手に取りやすいように、オリジナルのパッケージデザインを作成しました。ボランティアセンターのロゴをデザインに入れることで、大学公認の活動であることを示し、信頼性を高める工夫もしました。また、受け取りやすさにもこだわりました。気軽に受け取れるように、大学の入口付近に設置し、職員による声かけは不要にしました。結果的に、配布開始から2週間という短期間で200個全てがなくなりました。この活動を通じて、学生の中に意外と需要があることが分かり、大学側がこうした活動を今後も実施しやすくなるような「前例」を作ることができたと感じています。
▽大学での学びやゼミについて教えてください。
ゼミは、井手上先生のゼミで経済学を学んだあと、榎本先生のゼミに移りました。榎本ゼミでは特定の研究テーマに縛りがなく、多様なテーマに取り組む学生がいる環境で、ジェンダーやフェミニズム、少子化、移民などの社会課題を多角的に学びました。自分でテーマを見つけるのが苦手な私にとって、榎本ゼミの多様な視点に触れることのできる環境は合っていたと思います。
授業では、キリスト教文化とジェンダーの関係を扱った授業や、平和学関連の授業 などが印象に残っています。特に、キリスト教の授業で、キリスト教とジェンダーの関連について深く学べたことは、今の活動にも繋がっていると思います!
▽国際学部に対する思いを教えてください。
国際学部に入って「良かったな」と心の底から思っています。他の大学に進学していたら違う出会いもあったのかもしれないけれど、ここに入ったおかげで、自分が心の底からもっとやってみたいという分野が増えたし、やってみたいことをサポートしてくれる環境で活動することができました。
一番の魅力は、自由な空気感と学生の多様性です。人と一緒でないことを肯定してくれる、様々な分野に興味を持って活動している人がたくさんいます。
そして何より、やりたいと思ったことに対して、全力でサポートしてくれる環境があることです。ボランティアセンターの方々や教職員の方々が、「じゃあやってみようよ」「やってみなよ」と背中を押してくれました。途中で心が折れそうになった時でも、応援してくれる人がいるという安心感が、活動を続ける上での大きな支えになりました。
自分が「これ面白いかな?」「やってみたい」と思ったアイデアに対し、「じゃあやってみようか」と応えてくれるサポートの手厚さは本当にすごいです。分からないこともすぐに職員さんや先生に相談できる距離の近さも魅力だと思います!
▽将来どのような活動をしていきたいですか?
お金よりも自分のやりたいこと、自分がそこにいる意味を感じられる活動を優先したいと思っています。大学でのコンドーム配布プロジェクトを通して、性に関する話題の重要性や、話しにくいことをオープンにできる雰囲気作りの必要性を強く感じたので、性教育や性感染症予防啓発といった分野で活動を続けたいと考えています。
▽国際学部を目指す学生へのメッセージをお願いします。
国際学部は、「やりたいけど、何をすればいいか分からない」「何かをやりたいけど、自分が何に興味があるのか分からない」と思う人にとっては、すごく面白い学部だと思います。様々な授業や活動を通して、自分が「面白いな」「もっと知りたいな」と思える扉がたくさんあります。
だから、何かやりたいことが明確に見つかっていなくても、大丈夫だと思うんですよ!
「とりあえずこれ面白そうかな」「やってみたい」という、明確な理由がなくてもいいので、まず一歩踏み出してやってみることが大切だと思います。もしやってみて「合わないな」「無理だな」と思ったら、途中でやめてもいいんです。色々なことに手を出してみる中で、「これならやれるかも」と思える分野がきっと見つかるはずです。
あと、英語の勉強だけはやっておくといいと思います!英語は特に、日々の積み重ねが大切だと思います。国際学部に入学してからも、英語力を高めることで、学びの幅がさらに広がることを実感できるはずです。
▽どんな「挑戦」も全力で応援してくれるのが国際学部の魅力
国際学部には、挑戦を応援してくれる人がたくさんいるという大きな魅力があります。自分の思ったことや「こうしたい」という気持ちを、まずは言葉に出してみると、一緒にやってくれる仲間やサポートしてくれる人が現れるかもしれません。国際学部は、一人ひとりが個性を持っていて、その多様性を認め合いながら、挑戦を後押ししてくれる、私にとって最高の環境でした!
