取材日:2025/02/04

 

▽明治学院大学国際学部に入学した理由は何ですか?

 私が国際学科に進学した理由は、留学の機会が豊富にあるからです。高校生の時に進路を考えた際、他の国で生活してみたいという思いが強く、日本の外の世界に対する関心も大きかったため、留学制度が充実している明治学院大学国際学部を選びました。

 また、中学生のときに短期間ではありますが、オーストラリアへ海外研修に行った経験があります。そのときの体験がとても楽しい思い出として残っており、自分が普段生活している環境とは異なる文化や暮らしに触れることが、大きな刺激となりました。この経験をきっかけに、異なる環境で生活することに強く興味を持ち、国際学部への進学を決めました。

 

 

▽大学生活の中で頑張ったことを教えてください。

 大学生活の中で頑張ったことは、大きく分けて二つあります。

 一つ目は、日本に住む外国ルーツの子どもたちへの学習支援です。私は普段から、子どもたちの学習をサポートするボランティア活動に取り組んでいます。大学に入るまでは、自分が誰かを支援する立場になるとは考えていませんでしたが、この活動を通じて大きく成長し、自分の人生に大きな変化があったと感じています。

 二つ目は、韓国への交換留学です。もともと大学入学前から韓国語を少し勉強していましたが、実際に一年間韓国に住むことで、学んできた韓国の文化や言語を肌で感じることができました。現地での生活を通じて、新たな発見が多くあり、とても充実した一年になりました。

 

 

▽ボランティア活動の内容について詳しく教えてください。

 私は大学1年生の時にボランティア活動を始め、現在まで約5年間続けています。最初は、「多文化共生 各論1・2」という授業の実習先として、横浜にある「わたぼうし教室」で外国ルーツの子どもたちの学習支援を行いました。この授業では、単位取得のために学期中に数回の実習参加が求められていましたが、私は活動自体がとても楽しかったため、団体に「毎週参加してもいいですか?」と確認をとり、可能な限り毎週通うようになりました。活動は毎週土曜日に行われ、午前10時から12時が第1部、午後2時から5時が第2部というスケジュールで、継続的に関わりました。

 2年生になった頃、私は地元の埼玉にも外国ルーツの子どもたち、特にクルド人の子どもたちが多くいることに気付きました。横浜の団体の方と話す中で、「それなら自分で学習支援を始めてみては?」と提案され、代表の知人のクルド人の方を紹介してもらったことがきっかけで、埼玉での学習支援活動を立ち上げました。

 その後、1年間の韓国交換留学の間は活動を休止していましたが、韓国で受講した授業の中で、同様の学習支援ボランティアプロジェクトに参加する機会がありました。この経験を通じて、自分が埼玉で行っている活動をより安定したものにしたいという思いが強まりました。そのため、帰国後の1年間はボランティア活動に専念するために休学し、学習支援の基盤づくりに注力しました。

 現在は復学し、埼玉での学習支援を継続しています。高校受験を控えた3人の生徒がおり、忙しい時期を迎えていますが、彼らの将来のために全力でサポートを続けています。

 

 

↑わたぼうし教室の様子

 

 

▽大学を休学することに対しての不安はありましたか?

 休学することに対して、不安はありました。留学から帰国した時点で、四年生の春学期が終わっており、同期の多くがすでに就職活動を進めている時期でした。そのため、私も「就職活動をしなければならない」と焦る気持ちはありました。しかし、それ以上に「子どもたちのために何かしたい」という思いが強く、休学を決断するのに時間はかかりませんでした。

 とはいえ、休学届を提出した後、実際に一年を過ごす中で「本当にこのままで大丈夫だろうか」と不安に思うこともありました。それでも、振り返ってみると、最終的にはなんとかなったと感じています。もしあのとき周囲と同じように就職活動を優先していたら、得られなかった経験や成長があったと思います。自分のやりたいことを優先した選択は、結果として良かったと感じています。

 

 

▽ボランティア活動をしていく中で大変なことややりがいはありますか?

 大変なこととして、まず言語と文化の壁が挙げられます。例えば、現在支援している高校受験生の子どもたちは、家庭環境の影響もあり、勉強に対する意識が日本の生徒と異なることがあります。保護者の方々のなかには、「勉強が苦手なら無理に高校へ行かなくてもいいのでは」と考える方もいるため、家庭内で勉強する習慣が身についていない子どもが多いです。

 一方で、学校の友人関係を見ると、日本のルーツを持つ子どもたちは「高校に進学するのが当たり前」という前提で話をしています。そのため、学習支援を受けている子どもたちも「高校には行くものだ」とは思っているものの、勉強の習慣がないため、「頑張らなきゃいけない」と言われても、「何を頑張ればいいのか分からない」という状態になってしまいます。つまり、「高校受験=努力して勉強すること」という認識が十分に結びついていないのです。

 活動を振り返ってみると、私にとって「当たり前」だったことが、彼らにとっては決して当たり前ではないのだと実感します。そのため、日本の「当たり前」をどのように説明し、理解してもらうかが大きな課題となります。

 日常生活に関することであれば、「日本とクルドではこういう違いがあるんだね」といった形で受け入れやすいかもしれません。しかし、受験となると話は別です。日本に住んでいる以上、ある程度は日本の社会の「当たり前」に適応する必要があります。しかし、子どもたちはとても素直で、納得できないことにはなかなか行動を起こしません。そのため、「なぜ高校受験が重要なのか」「なぜ勉強しなければならないのか」といった問いに対して、彼らが納得できるような説明をすることがとても難しいと感じます。こうした経験を通じて、文化の違いが想像以上に大きな壁になることを痛感しました。

 一方で、やりがいも大きいです。支援を続けていく中で、子どもたちの成長を実感できる瞬間があるからです。例えば、最初に会った時よりも日本語が流暢になっていたり、苦手だった分数の計算がスラスラ解けるようになったりした時には、大きな喜びを感じます。また、英検などの試験で良い成績を取ったり、高校に合格したりしたという報告を聞くと、「続けていてよかった」と心から思います。

 

 

▽明治学院大学のボランティアセンターが開催しているボランティア大賞に参加されたとお聞きしましたが、その感想をお願いします。

 ボランティア大賞では審査員特別賞を受賞しました。私が発表したテーマは、クルドの子どもたちに対する学習支援活動についてです。発表では、大学4年間の学びがこの活動にどのように活かされたかを振り返る必要がありました。

 準備の段階で難しさを感じたのは、これまで多文化共生というテーマに関心を持ち、実習や留学を通じてさまざまな経験をしてきたものの、それらを深く振り返る機会が少なかったことです。例えば、横浜での実習先で「埼玉にこういう子どもたちがいる」と話したところ、「やってみたら?」と勧められたことがきっかけで学習支援を始めました。その後、韓国留学を経て、ボランティア活動に関する授業を履修するなど、自分の関心に沿って自然に活動を続けてきました。そのため、「学びと活動を結びつけてください」と言われたときに、自分が当時何を考えていたのかを振り返ることが難しかったのです。

 しかし、この振り返りを通じて、自分が4年間でどのように成長し、どのような思いを持ちながら活動に関わってきたのかを整理することができました。また、大学に入学した当初は、「留学の機会があるから」という自分本位な理由で国際学科を選んだのですが、次第に「誰かのために行動しなければならない」という意識が芽生えたことが、自分にとって大きな変化だったと感じています。

 ボランティア大賞を受賞したことで、埼玉での活動に対する責任感が大きくなったと実感しています。それまでは自分のスケジュールに合わせて支援を行っていましたが、発表を通じて多くの人にこの活動を知ってもらった以上、成果を出し、さらに広げていく必要があると考えるようになりました。また、自分自身の活動を振り返ったことで、より一層の熱意が生まれました。

 特に発表後は、学習支援の枠を超えて、子どもたちの進路選択にも積極的に関わるようになったと感じています。例えば、受験生の支援では、単に勉強を教えるだけでなく、一緒に志望校を考えたり、学校説明会に同行したり、願書を取りに行ったりするなど、より深く寄り添う形でサポートするようになりました。こうした関わりを通じて、学習支援を「勉強を教える場」にとどめるのではなく、子どもたちの将来に寄り添う支援へと発展させていきたいと考えています。

 

 

▽ボランティア活動に興味のある学生にメッセージをお願いします。

 私はわたぼうし教室横浜とわたぼうし教室埼玉で活動しており、特徴として支援側も学生を中心に活動している点があります。しかし、学生たちがこうした活動に関わる機会はなかなか得られません。私たちは常にボランティアスタッフを募集しており、学生にもぜひ知ってもらいたいと思っています。

 ボランティア活動は、外から見るとハードルが高いと感じるかもしれませんが、実際に関わってみると、意外と簡単に始められることが多いです。私自身も、この活動を通して、友人から「自分で立ち上げたんだ、すごいね」と言われることがありますが、正直言うと「偉い」とか「すごい」といった特別なことではなく、一歩踏み出す勇気さえあれば、新しい世界が広がる活動だと感じています。

 ですので、もし興味があれば、積極的にいろいろな活動に関わってみてほしいと思います。ボランティア活動を通して、新しい経験や視点を得ることができるはずです。

 

 

▽次に交換留学について、どの国に、いつ、どのくらいの期間留学していましたか?

 私は、三年生の秋学期から四年生の春学期にかけて、韓国のソウルにある延世大学に留学していました。専攻は文化人類学でした。韓国に行くことも、海外に長期間住むことも初めてでした。

 

 

▽明治学院大学のどの留学制度を使いましたか?

 私は交換留学の複言語留学という留学制度を使いました。複言語留学はその国の言語で授業を受けるため、私は大学の授業を全て韓国語で受けました。

 

 

▽韓国に留学しようと思ったきっかけは何ですか?

 私は、大学に入学してから新型コロナウイルスの影響で、二年生になってもなかなか留学のチャンスがありませんでした。三年生になると就活が始まるので、留学は時期的に無理だろうと考えていたのですが、二年生のときに埼玉で新しいボランティア活動を始め、その中で「やってみたいと思ったことには挑戦しよう」という気持ちが強くなっていました。

 そんな時に交換留学の募集をポートヘボンのお知らせ欄で見かけ、コロナ禍の影響で海外旅行が難しい状況だったにもかかわらず、「韓国に行けるチャンスだ」と感じ、交換留学で韓国に行くことを決めました。

 韓国を選んだ理由は、高校生のころから韓国ドラマが大好きで、韓国語を勉強してきたことが影響しています。学科が国際学科のため、英語に挑戦することも考えましたが、英語よりも韓国語をさらに深めることに興味を持ち、一つのことを極めてみようと思いました。それが韓国留学を選んだ理由です。

 

 

▽全ての授業を韓国語で受けることは大変でしたか?

 全ての授業を韓国語で受けるのは大変でしたが、慣れてしまえば問題ありませんでした。授業が始まってから最初の2週間はとても大変でした。例えば、明治学院大学での授業では、資料を読んでくるように言われても、電車の中で読んで自分の意見を思いつくことができましたが、延世大学での授業は内容が非常に難しく、資料も膨大で、論文を読んでくるように指示されることが多かったです。特に、韓国語と英語の論文が両方出てきて、ファイルを開いた瞬間に絶望的な気持ちになりました。

 私がこれまで勉強してきたのは、日常会話用の韓国語だったため、専門的な用語が出てくると、すぐには理解できませんでした。何度も立ち止まり、「あ、そういうことか」と確認しながら進めていました。コメントを専門的な用語で書こうとすると、自分の口から出てこないこともあり、大変だった記憶があります。しかし、二週間ほど過ぎるとだんだん慣れてきて、それからは楽しく授業を受けることができました。

 

 

▽留学生活の中で大変だったことはありますか?

 大変だったことは、生活環境に関することです。最初は留学生寮に入ったのですが、ルームメイトが一人いる部屋でした。韓国の留学生寮ということで、韓国語が少し話せる人が来るだろうと思っていたのですが、実際には全く韓国語が話せない学生がルームメイトでした。彼女はタイにルーツを持つアメリカ人で、最初に会った瞬間に英語で話さなければならないことに気付きました。

 韓国語で授業を受け、帰宅後はルームメイトと英語で会話しなければならなかったため、母国語である日本語を使う瞬間が全くなく、とても疲れる日々が続きました。頭をフル回転させる環境に慣れるのは難しかったです。

 また、ルームメイトと相性が合わなかったため、留学生寮を出ることを決め、その後、家探しを自分で行いました。しかし、韓国の家事情が日本と全く異なり、「どうやって家を探せばいいのか」と迷うことがありました。最初は少し困惑しましたが、最終的には落ち着いて新しい家を見つけることができました。

 

 

▽自分で韓国の家を探したのですか?

 はい、実際に自分で韓国の家を探しました。ただ、契約という形ではなく、下宿という形で、韓国のおばさんが運営している寮のようなところに連絡を取りました。実際にその場所に行き、色々と話を聞きましたが、家賃のやり取りについてはあまり詳しくなかったので、突然出てくる知らない単語に戸惑うこともありました。そんな時には、なんとか理解しようとしながら進めていった記憶があります。

 

 

▽韓国での留学生活を通して、印象に残っていることはありますか?

 私は留学当初、自分の韓国語能力のせいで他の人の足を引っ張りたくないと思い、グループワークのある授業を避けて、自分だけが勉強すれば単位を取れる授業を選んでいました。そのため、現地の学生たちと交流する機会が少なくなってしまいました。しかし、留学の醍醐味は現地の学生との交流だと思い、次の学期である四年生の春学期には、グループワークのある授業を選びました。選択した授業の中で、ボランティア活動を企画して実行するという授業がありました。私のグループは、日本人が私のみで、残りは現地の学生でした。

 その授業では春学期の短い期間の中で、ボランティア活動の主題や対象者、実施方法を設定し、それを手伝ってくれる他の団体と連絡を取り、実際に活動を行うという作業を進めました。非常に手間のかかる作業でしたが、春学期内にすべてを終わらせなければならず、とても忙しい時期でした。授業後にはミーティングをし、その後みんなでご飯を食べ、提出期限が迫ると、遅くまで図書館やカフェで企画書を作成しました。実際にボランティア活動を行う際も、協力し合って進め、活動後にはみんなでお疲れ様と言って食事に行きました。また、他の課題のインタビューを手伝い合うなど、現地の学生と一緒に多くのことを頑張った記憶があります。

 今でもそのグループのメンバーとは連絡を取り合い、韓国に行った際に会うこともありますし、彼らが日本に来た際には再会することもあります。大変なことを一緒に乗り越えたからこそ、今も交流が続いているのだと感じています。この経験は、私にとって韓国留学一年間の中でとても楽しく、また大変でもあり、思い出深い出来事になりました。

 

 

↑韓国でのボランティア実習

 

 

▽所属ゼミと卒業論文のテーマを教えてください。

 私は中田ゼミに所属していて、日本に住んでいるクルドの人たちの生活をテーマに卒業論文を書きました。

 

 

▽卒業論文執筆にあたり、大変だったことはありますか?

 ありました。私は支援者側の立場なので、クルドの方々が置かれている状況、特に仮放免の方々が多いことを知っていました。仮放免の人々は就労ができず、国民保険にも加入できません。そのため、在留ステータスや生活環境が非常に厳しく、一人の人間として自立した生活を送ることが非常に困難な状況です。そういった現実を目の当たりにしていると、どうしても彼らの大変な部分、例えば「こういうことが原因で生活が困難になっている」といった点に焦点が当たってしまいがちです。

 卒論を進める中で、そのような感情的な視点になってしまった部分に、中田先生からご指導を受けました。感情論に偏りすぎると、クルドの人々に関する問題の本質が浮き彫りにならないという指摘でした。実際には、入管側の政策に問題がある場合もありますし、支援者がクルドの方々のニーズに適切に対応できているのか、また自治体としてどのような対応がなされているのかという視点も重要です。それらを多角的に分析し、問題を明確にしない限り、深堀りはできないということを先生から学びました。

 また、実勢に資料を探すことも大変でした。支援者側に立つ私の視点が強く出てしまい、中立的な立場からクルドの人々の問題を明らかにすることが難しく、何度も行き詰まることがありました。しかし、中田先生と議論を重ねるうちに、クルドの問題に関して何も知らない一般市民にその重要性を伝えるためには、中立的な立場を取った報告書やレポートが必要だということを強く感じました。

 

 

▽あなたにとって国際学部とは何ですか?

 私にとって、国際学部は自分の人生にとても大きな成長の機会を与えてくれた場所です。成長を促してくれる環境が整っていた場所だったと思います。私自身、国際学部の友人たちは非常に多様な選択肢を持っていると感じており、大学四年間を終えた後に、就職だけでなく、ワーキングホリデーに行ったり、途中で留学を経験したりと、他の学科の学生に比べて選択肢が広いのが特徴だと感じています。

 そのような環境だからこそ、私は自分がやりたいことを見つけたときに、それに進む勇気を持ちやすかったです。学習支援もしたいけれど、韓国留学にも行ってみようと思ったりと、自分の人生を豊かにするために、様々な選択肢を選びやすい環境だったと感じています。私の周りにも、多くの選択肢を持つ仲間が多かったため、私が「休学する」といった珍しい行動を取った時にも、温かく後押ししてくれる人たちが多かったです。このような環境が私にとって非常に大切だったと思っています。

 

 

▽読者にメッセージをお願いします。

 少しでも興味が湧いたことがあれば、それに挑戦してみることが、自分にとって後でプラスになると思います。就職活動の時期だからといって「やめておこう」と思わずに、興味を持った時こそが新しい一歩を踏み出すタイミングだと思います。何事も一歩踏み出すと、新しい発見があり、新しい経験や学びが得られます。もちろん怖いと感じることもあるかもしれませんが、まずは進んでみることが大切です。そうすると、後から結果がついてくるものです。皆さんも挑戦を恐れずに、色々なことを楽しんでください。

 

 

〇大栗夢加

2020年明治学院大学国際学部国際学科入学

2020年わたぼうし教室横浜 活動開始

2021年わたぼうし教室さいたま活動開始

2022年8月から2023年7月 ソウルに長期留学