取材日: 08-30-2024
取材者: 蓑田 道
今回は、筑摩書房で編集や製作に携わっている93kの藤岡泰介さんにお話を伺いました。藤岡さんは学生時代には平和学や民俗学を専攻し、日本人の文化やアイデンティティについて研究していました。国際学部での学びを活かし、筑摩書房に入社後、本の企画から製作まで、一貫して読者に愛される書籍を届けることに力を注いでいます。藤岡さんに、これまでの道のりや現在の取り組み、国際学部への思いについて伺いました。
▽明治学院大学国際学部国際学科に入学した経緯を教えてください。
私が明治学院大学国際学部に関心を持ったきっかけは、中学生の時に、昭和天皇が亡くなった際の自粛ムードに疑問を感じたことにあります。日本全体が自粛ムードとなり、明るめのCMが取りやめられ、多くの大学で学園祭が中止になった中、明治学院大学だけが学園祭を開催していたことに驚き、「こんな大学があるんだ」と興味を持ちました。高校生になり、進研ゼミの資料で大学の情報を調べたときに、明治学院大学の国際学部の教員欄に、私が図書館で読んでいた本の著者が並んでいるのを見て、「ここはすごい」と強く惹かれました。私の高校には明治学院大学への指定校推薦があり、推薦が決まれば塾の授業料が返ってくる制度もあったため、国際学部に推薦入学を決めました。また、戦争に反対する気持ちが強く、「平和学」を学べる国際学部に入りたいと考えていました。
▽大学入学後の専攻について教えてください。
入学当初は国際平和に関心があり、取り組んでいましたが、阿満利麿先生のゼミで民俗学に出会い、日本人のアイデンティティや文化についても深く考えるようになりました。特に柳田国男の『日本人』という本や益田勝実の仕事に影響を受け、日本人の国民性や集団意識について関心を持っていました。
▽筑摩書房に入社したいと思った理由を教えてください。
筑摩書房は、柳宗悦の全集をはじめ、好きな本をたくさん出版していました。よく学校帰りに戸塚の有隣堂で立ち読みしていたのですが、面白いなと思うのはどれも筑摩の新書なんですよね。戸塚の有隣堂、まだ地下にあるのかな?筑摩書房の新書や雑誌に親しんでいたことも入りたいと思った理由の一つです。
▽大学卒業後の進路について教えてください。
最初から筑摩書房に入社したいと思っていたのですが、当時は新卒採用をしていなかったため、他の会社に就職しようと考えました。出版社を目指していたのですが、100社以上は受けました。大手出版社K社の最終面接まで進めて、これで入れるのかなと思ったら結果は不合格で…
その後、税金と会計専門の出版社に就職しました。関心分野は違っていたのですが、とても面白く、国会記者クラブに加盟している会社なので、国会や政党にも出入りできたんです。財務省や法務省なども取材できたりして、色々なところを知れました。省庁の食堂も巡れたのは面白い経験でした。農水省は「米うまいな」なんて思ったり(笑)。
▽筑摩書房への入社の経緯について教えてください。
税金と会計の出版社も良い経験になりましたが、やはり自分が求める「楽しい本」を作りたいという気持ちが強くなり、27歳で前職を辞めました。その後、職のない期間が半年ほどありましたが、その間、前職の知識を活かして相続税対策の小冊子などを書く仕事もしていました。だから、皆さんも、何でも経験するといいと思います。思わぬところに面白いものが転がっているかもしれません。筑摩書房には学生時代から入りたかったので、編集者に手紙を送るなどして、何度も挑戦し、入社がかないました。
▽藤岡さんが今一番力を入れて取り組んでいることは何ですか?
編集部から製作部に異動したので、物理的に本を作る業務に力を入れています。紙質、印刷方法、製本技術などにこだわり、ずっと持っていたくなるような本を作ることに注力しています。
▽近年の学生の本離れについてどう考えていますか?
最近、書店が少なくなっていますよね。図書館や書店に立ち寄り、新たな本と出会うと、そこからさまざまな繋がりが生まれるのではないかと思います。ぜひ、目的はなくてもふらっと立ち寄って下さい。
明学の図書館はなかなかよくって、特に、白金キャンパスの図書館はとっても充実しています。実は明学の図書館は卒業後もカードを作れば利用できるんですよ。社会人になっても、興味のある本を手に取ることが良い出会いに繋がると思います。
▽国際学部での学びが今の仕事にどのように繋がっているか教えてください。
私にとっては、仕事と学びが直結していて、本の企画は大学で学んだことそのものです。実際に、国際学部の先生の講義がそのまま書籍になっていることもあります。私の本の作り方も授業の内容をまさに本にしていくというような形で、先生たちには「この時の話が面白かったのでそこを膨らませてほしい」と話したりしています。
▽国際学部に対する思いを教えてください。
国際学部は自分の一部のような存在です。今でもOB・OGと集まって読書会を開くなど、深いつながりがあります。明学の国際学部は人数が少なく、先生と学生の距離が近いので、卒業後も一生アフターサービスがついてくるような感じですね(笑)。
821号室は階段状の教室になっていますが、元々は先生が一番下で話し、学生が寝転がって授業を聞くというコンセプトの部屋だったんですよ。ローマの元老院をイメージして作られたそうです。権威主義的でなく、自由な雰囲気があるところが明学国際の魅力的なところだと思います。
▽国際学部を目指す学生へのメッセージをお願いします。
明学国際は、他の大学では得られないユニークな経験ができる場所だと思います。今でも個性的な先生方が揃っており、明学国際に進んだ人は本当にラッキーだと思います。そして、緑を満喫しながらランチが食べられるという、戸塚ならではのメリットもたくさんあり、学際的な学びが可能なところが魅力です。異なる分野の先生方と繋がり合い、視野を広げることができるのは、明学国際だからこその経験だと思います!
故・柚木沙弥郎氏の対談を収録中の藤岡さん