RE100という国際ニシアチブが注目を浴び始めている。100%再生可能エネルギーでの事業運営を目標に掲げるという取り組みだ。分かりやすく言えば、事業体が使用する電気をすべて再生可能エネルギーで賄おうということだ。
再生可能エネルギーを自身が持つ施設で発電してもよいし、市場で再生可能エネルギー電力を購入しても構わない。2014年から開始され、日本ではリコー、積水ハウス、イオン、富士通、ソニーといった有名企業も名を連ねるようになっている。
2018年10月には、国内最大規模の企業団体である日本経済団体連合会(経団連)が、「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組みの加速を求める」という提言書を発表した。地球温暖化対策に積極的に関わらなければ、大企業といえども生き残っていけない時代になっている。
このような流れのなか、千葉商科大学が2017年11月13日に、2020年までに学内で使用する電気や熱のすべて(RE100は電気のみ)を再生可能エネルギーで賄う体制を構築すると発表した。大学としてRE100を宣言するのは、国内では千葉商科大学が初めてで、海外を見渡しても先駆的だという。
千葉商科大学の再生可能エネルギーは、2013年に大学の野球グラウンド跡地に建設された野田メガソーラー発電所で主に発電されている。発電所の2014年度の発電実績が学内電力消費量の77%に相当することが明らかになったことをきっかけに学内でエネルギーに関する意識が高まり、2015年に省エネ・創エネプロジェクトが立ち上げられた。また、2016年には全学的にネット・ゼロ・エネルギーキャンパス化を目指した活動が始められた。
とはいえ、2016年度の千葉商科大学全体の消費エネルギー量(電気とガス)(約581万kWh)のうち、再生可能エネルギーの発電量は54.2%(約315万kWh)に過ぎなかった。再生可能エネルギー100%を実現するためには、残りの48.5%を省エネと創エネで埋め合わせなければならず、そのためのさまざまな取り組みが2017年度から実施されている。
取り組みの一つが野田発電所におけるソーラーパネルの増設で、2018年度の年間発電量は14%増加の447万kWhと見込まれていた(不足分45.8%のうちの7.7%)。創エネよりも注目したいのが省エネで、まず照明をLED化することによって、電力消費を抑えることに成功した。またエネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入することによって、エネルギー消費の実績値が把握できるようになったため、データを利用して省エネ施策をとることができるようになったという。
上記に加えて面白いと思ったのが、2018年の春に大学とともに活動する学生団体SONE(Students Organization for Natural Energy)が発足し、学生目線で省エネや地球温暖化防止の取り組みを考え活動していることだ。学生発案より大学が動いた事例として、飲料自動販売機の撤去がある。学生がキャンパス内にある38台の自動販売機の売上と消費電力を調査し、利用度が低い4台の自動販売機撤去と消費電力が大きい旧型を省エネの新型に変更するように大学に要請した。その結果、自動販売機10台が撤去され、残る自動販売機のすべてが省エネ型に変更されたという。
千葉商科大学のHPによると、上記の取り組みなどを通じて、2018年で電気だけでは98.5%(2019年1月にRE100を達成した)、電気・ガスでは77.2%の消費量が再生可能エネルギーで賄われた。さらに、2020年には電気・ガスの消費量のすべてを再生可能エネルギーで賄えるように、現在も省エネ・創エネに取り組んでいる。
千葉商科大学が再生可能エネルギー100%大学を目指しているのは、地球温暖化や原発問題、そして地域への貢献を考慮したときに、化石燃料ではない自前の再生可能エネルギーによる地域循環型経済が必要不可欠と考えているからだ。千葉商科大学の学長は、雑誌のインタビューのなかで「再エネ100%の取り組みを通じて、地域になくてはならない大学を目指す」と話している。明治学院大学国際学部でも、千葉商科大学の取り組みで、参考にできることがあるのではないだろうか。
明治学院大学において、いきなり自家供給でRE100を実現するのは難しいが、太陽光パネルをさらに設置する余地がないかを考えたり(2013~2015年の横浜キャンパス向上計画(エコキャンパス構想)でC館、E館、G館の屋上に太陽光パネルがすでに設置されており、蓄電池も備えられていて非常時でも電気が使えるように整備されている)、省エネを実現する方法を考えたりすることはできる。
再生可能エネルギーは防災の観点からも重要で、万が一の事態が生じて2011年のように電力会社から電気が供給されなくなったときでも、横浜キャンパスの体育館に着きさえすれば電気を使用できる体制を整えてあることを周知しておくことが大学にとっても、また地域社会にとっても意義あることである。
メガソーラー発電所を持たない明治学院大学がRE100に向かっていくという意味では、電力の調達先を選ぶことが重要になる(明治学院大学は現在、JXTGエネルギーと契約している。化石燃料中心の電源構成で、再生可能エネルギーは約6%ほどである)。丸井グループは、2018年12月にみんな電力と資本業務提携契約を締結した。みんな電力は、再生可能エネルギーを中心に電気を供給している電力会社だ(2018年度の計画値で再生可能エネルギーが75%)。
みんな電力から電気を買っていることもあり、新宿マルイ本館の再生可能エネルギー比率は、90%であるという。みんな電力がさらに興味深いのは、ブロックチェーン技術を活用して調達電源を特定できるようにしている点だ。2019年2月に学生と会津電力や飯舘電力といった福島の市民電力会社にうかがったが、そのような電力会社で発電した電気を明治学院大学が買うこともできる。明治学院大学が環境・地域・社会に貢献する方法として、再生可能エネルギーの電力を選ぶという方向も考えてよいのではないだろうか。社会変革に大学が関われる重要なテーマがRE100である。
最後に、最近読んだ本の載っていた詩を紹介したい。
おいらは太陽に背を向けて
山から石炭を掘り出している
おいらは太陽に背を向けて
石油を求めて試し掘りをしている
おいらは太陽に背を向けて
原子核を分裂させている
いったい、いつになったらおいらは太陽に顔を向けるのだろう?
フリッツ・ギリンガー
(エルヴィン・トーマ(2003)宮下智恵子訳『木とつきあう智恵』地湧社、p.168。)
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〇林 公則先生(はやし きみのり)国際学科准教授
公害・環境問題と経済活動/軍事環境問題
高崎経済大学経済学部経済学科卒業。一橋大学経済学研究科応用経済専攻修士課程、博士課程修了。経済学博士。早稲田大学アジア太平洋研究科日本学術振興会特別研究員や一橋大学経済学研究科特任講師を経て2018年から明治学院大学国際学部国際学科。
著書には『新・贈与論』や『軍事環境問題の政治経済学』など。
