▽学部生時代は?
僕は勉強家ではありませんでした。本当に勉強していなくて、大学にもほとんど行っていませんでした。麻雀をしたり、朝までお酒を飲んだり、今考えたら信じられないような過ごし方をしていました。勉強をしに大学に入ってきたのに自分はなんでこんなに勉強しないのかと悩む時期がしばらくありました。サボって悩んでいたという感じです(笑)。
▽なぜ大学院に行こうと思ったのですか?
このままじゃまずいと思ったんです。あまりにも僕は勉強に対して真剣にやってこなかったので、例えば卒業できて会社に入ったとしても、もう自分の考えたいように考えるとか、人とは違う考え方を身につけることはできなくなると思いました。
それが怖くなったので、ちょっとがんばって大学院に入ったという感じです。はじめから何かをすごく研究したいと思って研究の道に入ったのではなく、もっと自分は色々と知らなければいけないと思って大学院に進みました。
▽この研究を志した理由は?
大学院生だった時から今の研究を始めました。修士課程修了後、仕事でインドネシアに2年間滞在した際に、インドネシア経済の仕組みを知ることができました。インドネシア国内での議論でもグローバル化を進めるという文脈で「外国からの投資をどんどんインドネシアに受け入れよう」という声や、「そのために外国の企業の投資の妨害になっているものを無くそう」という声が一般的でした。
しかし、首都ジャカルタの生活のなかで、「何か見落としていることがある。一部の人に利益が集中しているのではないか。」とずっと思っていました。やはり、広くインドネシア全体を見渡すと、その恩恵を享受できていない地域や、都市に住んでいてもずっとスラムのままな場所もあります。これは研究して富が偏在する構造を明らかにする必要があると思い、今の研究活動に至っています。
▽学生時代に読むべきオススメの一冊は何ですか?
『青春漂流』(立花隆、1985年)です。ジャーナリストである立花隆さんが当時、各分野で頭角を現し始めた若者に、どういう青春時代を送ったか、インタビューをしています。若者がどういう悩みを抱えて、葛藤しているのかを上手く聞き出していて、これを読んで、自分はこのままじゃダメだなと思ったのを覚えています。
この本は30年以上前に書かれていますが、内容は全く古びていなく、むしろ今の若い人にとって参考になると思います。この11人の人たちは共通して空白の期間、何していたのか自分でもよく分からない期間があるようです。
「謎の空白時間」が若い時期に必要だということですが、現代の若者はそれができにくくなってきていると思います。自分と向き合う時間を持つようなきっかけになればなと思ってこの本をオススメします。
本を読むのも大事ですが、それと同じくらい、人に出会うことも大事です。
魅力的な人に出会って、その人と関わるようになって、そして、その人から信頼され、期待されると、人はその信頼とか期待に応えようとします。その中でやりたいことが自然と見つかるようになってきます。
そういう人と出会う機会があまりない中で、自分の好きなことを見つけろと言われても無理なように思えます。「本を読め、人に会え、旅をしろ」という言葉がありますが、学部生のころはいろいろな本を読んで、いろいろな人に出会ってほしいと思います。
▽今後の研究の目標は何ですか?
3つのテーマの内、特にパーム油について取り組んでいます。今までパーム油の生産から加工までを研究していたのですが、加工から消費、つまり我々の口に入るとか、化粧品になって肌に塗られるとか、我々の手元に届く段階までの研究があまりありません。つまり我々がパーム油を消費する段階、どういうパーム油が入った商品を買っているのか、それによる我々の健康はどうなっているのかといったパーム油の消費面の研究をやろうと思っています。
(取材日:2018/11/16)
〇賴俊輔(らい しゅんすけ)国際学科准教授
グローバリゼーションの政治経済学、途上国経済、一次産品開発
横浜国立大学経済学部卒業後、同大学大学院国際社会科学研究科博士修士・博士課程修了。経済学博士。在インドネシア日本大使館専門調査員や国際協力機構審査部を経て現職。
著書には『インドネシアのアグリビジネス改革:輸出指向農業開発と農民』(日本経済評論社)や『転換期のアジア資本主義(共著)』。
論文には「インドネシアにおけるアグリビジネス改革:パーム油バリュー・チェーンの分析から」や「日本の海外水道事業への関わり方の検討:世界の「再公営化」およびカンボジア・プノンペンの水道改革の事例から」(地方財務協会)がある。
