取材日:2020/11/26

 

▽なぜ国際学部に入ったのですか?

 私はマレーシア出身です。マレーシアは、イスラーム教、仏教、キリスト教の人がいる多民族多宗教の国です。日本人にとっては「グローバル」な環境かもしれませんが、私にとっては、それが「ローカル」な環境でした。

 高校卒業後、来日して日本語学校に通い、そこの先生が「国際学部に入ったら?」と国際学部を紹介してくれました。マレーシアには「国際学部」という学部が無いので、その時初めて、日本にそのような学部が有る事を知りました。

 大学を探す時は、国際学部があるキリスト教系の学校が良いなと思っていて、明治学院大学に辿り着きました。特に、明学の「Do for Others」という教育理念に共感した事や、多民族国家のメリットやデメリットを日本の観点から見る事に興味があった事から、明学の国際で学びたいと思い、正規留学生として入学しました。

 

 

▽学部生時代はどのような活動をしていましたか?

 私は学部生時代、ボランティアセンター、サークル、ゼミの3つの活動に注力しました。

 1つ目は、ボランティアセンターでの活動です。サブチーフとして、地域活性化のため、戸塚にある大農園のお手伝い、吉田町や戸塚町のお祭りでの出店、盆踊りの参加など、様々な活動をしました。

大木農園での作業中
お祭りの様子

 2つ目は、2年生の時に立ち上げた「アジアの“わ”」というサークルでの活動です。現在は状況やシステムが変わっているかもしれませんが、私がいた頃の正規留学生は、交換留学生とは違い、大学から特別な支援を受けらませんでした。交換留学生には、バディ制度があって、日本人が留学生をサポートしてくれる制度がありましたが、正規留学生には無く、日本人の学生と全く同じように一緒に授業を受け、たまに国際交流センターの方とお話をするくらいでした。そのため、正規留学生が一人で歩いている事が多く「なんだか寂しいな…。」と思っていました。

 「せっかくアジアから来た正規留学生がたくさんいるのに、大学内の交流の場が無いだろう?」と思い、留学生同士や日本人学生と交流できる場を作りたいと考え、正規留学生はアジア出身の学生が多かったので、「アジアの“わ”」という国際交流イベントサークルを作りました。活動としては、昼休みに自分の国の文化や、恋愛観などを紹介してもらったり、各国の料理を持ち寄ったりしました。それ以外にも国際キャリア学科のヴィーシー先生が、私たち留学生を鎌倉散策に連れて行ってくださいました。

 3つ目は、大岩圭之助ゼミでの活動です。ゼミでは「幸せ」について研究をしました。校外実習で1970年代から国民総幸福量(GNH)提唱し国である、ブータンに行きました。GDPは国の経済力について測るものですが、経済力=幸福度だとは限りませんよね?そこで、国王が「GNH(Gross National Happiness)」という幸福度を測るものを作りました。私たちは本で勉強したのですが、ブータンの人たちは本当に幸せなのか調べるために現地に行きました。現地の警察官、お坊さんなど多くの人に話を聞かせてもらい、とても良い勉強になりました。

ブータンの民族衣装

ゼミを通して、環境に対して興味を持ち、卒論では「ボルネオ島の環境」について書きました。ボルネオ島は世界三大熱帯雨林と言われていますが、オラウータンなどの様々な生物が、環境問題により絶滅寸前です。そんなボルネオ島に大岩先生と2人で行き、1週間先住民の「ペナン族」を探す旅をしました。彼らは1つの場所に留まり続けると、その場の食料を食べ尽くしてしまうと考えているため、エコロジーのために森で移住生活をしています。この原住民と一緒にコウモリやイノシシを狩猟した経験は、とても貴重なものでした。

 ボルネオ島の原住民先住民の比率が大きくなっていますが、今はそのほとんどは森に居ません。森で生活をしているプナン族(ペナン族は200人以下だと言われています。政府は森林伐採や、パームオイルの栽培をしたがっているので、彼らを森から追い出したいみたいですが、彼らはそれに反対して盛に留まっています。

 

▽卒業してからどのように現在のキャリアに至りましたか?

 就活は、地域活動ができる仕事がしたいと思って進めました。ボランティアセンターの「1 day for others」という活動で、横浜ビールさんにお世話になりました。その会社は地域貢献に力を入れていたので、入社したいと思ったのですが、ビザが通らなかったので諦めて別の会社を探し始めました。

 日本のビジネスマナーはマレーシアと全く違うので、とても苦労したのですが、その経験が今の仕事でも役に立っています。日本のビジネスマナーは確かに過剰な面もあるので、良い悪いの評価は別にして、そのビジネスマナーを大学生の内に身に着ける事は将来役に立つと思います。

 私は、パソコンリサイクルの会社に新卒で入り、現在は転職し、植物に関連する会社で働いています。大学で文化人類学や環境について勉強したので、自分の仕事が環境破壊に繋がる仕事はしたくない、環境を配慮した社会貢献したい、もし子供がいたら、誇りを持って話せる仕事がしたいと思い、会社を選びました。ですので、業界は全く違いますが、自分の中では「環境に貢献できる仕事」として筋が通ってると思っています。

 パソコンリサイクルの会社では、私が新卒の外国人であるにも関わらず、いきなり人事を任されました(笑)ローカルな会社だったのですが、グローバルに活動したいと考えているようでしたので、私がそこに配属されたようです。そのため、1年目から、会社説明会や、採用面接、大学への挨拶回りを行いました。会社の言葉を、日本人が分かる日本語で話さなければいけないので、始めの頃は頭が真っ白になってしまいました。しかし、上手く伝えられない事が悔しくて、頑張って上達したので、最終的には大人数の学生の前で話しても、分かってもらえる日本語が使えるようになりました。この経験は、私にとって、とても大きかったです。

 3年目になると、会社が「マレーシアで支店作るから、駐在で立ち上げ参加してくれないか?」と提案されたので、それに従いマレーシアで支店の立ち上げに貢献しました。その頃、新しい事に挑戦したいと思っていたのですが、そこで出会った今の社長に「マレーシアに残って一緒に仕事しないか?」と誘っていただき、仕事に魅力を感じたので、1社目の会社を退職してマレーシアに残り、今の会社に転職する事にしました。

 

▽現在どのような仕事をしていますか?

 今の会社は、土ではなくサントリーが独自に開発した、土に代わる新素材「パフカル」を取り扱って植物を環境緑化の仕事をしています。この会社に興味を持った理由は、自分はペナン出身なのですが、ペナンは植物が多く、海もある自然豊か場所です。そのため、クアラルンプールに来て、たくさんの高層ビルを見て「コンクリートジャングルで、自然があまり無いのは寂しいな。」と思い、植物を増やす仕事をしたいと思ったからです。

 今はトヨタサントリーミドリエーの商品を取り扱ったり、東南アジアの総代理店として活動したりしています。また、園芸、オンラインショップでの一般の方への販売や、施工会社でもあるので、壁面緑化の仕事もしています。変わった業種なので、聞いた事ない学生さんも多いと思います(笑)日本だと、京都のヨドバシカメラや東京駅の植木などを担当していますし、マレーシアでは、マレーシア空港、マイクロソフトの壁なども担当しています。

壁面緑化の紹介

 現在会社は、BtoBだけでなくBtoCにも力を入れ始めています。”1  Person, 1 Plant” というスローガンの下、1人1つの植物を持ちCO2の排出を減らす事を目標としています。そのため、一般のお客様に向けて、1つでも持ってもらえるように手入れが簡単な植物を紹介しています。

 

▽あなたにとって国際学部とは?

 私にとって国際学部は「自由」でした。先生方も自由で、個性が強くて、自分の研究に夢中になっていて、学生も色んな考えを持っていて、そんな色んな人と話す中で、色んな考え方を身に着ける事ができました。それらは、自分のとても大きな成長に繋がりました。

 

▽在学生へのメッセージ

 自分の一本道を見つけてほしいです。国際学部では、政治、経済、法、環境など幅広く勉強する事ができます。でもその反面、自分が何を勉強したいか分からなくなってしまいます。ですので、「自分は本当に何が勉強したいのか」を意識して、自分の価値観を身に着けてほしいと思います。

例えば、私は環境一筋で勉強をし、環境という軸の下で、様々な出来事に対して自分の意見を持つようにしました。自分の軸を決めていないと、周りの意見に流されてしまいますからね。自分の価値観を極めてから、多くの物に取り組んだ方が良いと思います。ですので、自分が勉強したい分野であるゼミで一生懸命勉強して、ゼミの先生の価値観を自分の物として吸収してほしいなと思います。

 

〇Vincent Tsng

1989年生まれ。2009年に明治学院大学国際学部国際学科に入学し、大岩ゼミに所属。学部生時代には、正規留学生のためのサークル「アジアの“わ”」を立ち上げる。

卒業後、リングロー株式会社で人事として勤務。現在は転職し、Green Planet Midori Sdn.Bhd.で勤務。