今後の研究目標は?

 今興味を持っているのは、通貨統合したヨーロッパと、結合後のここ10年くらいの動きについてです。多くの国では、別の国の市場での売り買いや、労働市場における多くの規制があります。ですが、ユーロはそれを全部取っ払って、ヨーロッパの中ではどこの国の市場でも、自由に売り買いができたり、働いたりできる市場統合から始まり、その後、通貨統合に発展しました。このように経済からスタートしましたが、最近は政治的な側面での統合が進んでいます。ここ10年くらい気になっているのは、先ほど、一つの国で一つの通貨を使うのは、不便だから複数の国を跨いで同じ通貨を使う方が便利ではないかという話をしましたが、最近の流れを見ているとやはり、通貨が上手く機能するためには、国という枠組みが必要なのではないかという点です。ヨーロッパは市場統合をし、通貨統合をした初めのうちは、そこで終わらせようと思っていたのかもしれませんが、近年政治的な結びつきが否応なしに強くなっています。そして、それに反発する人達がEUから離脱しようとしています。

 だから、僕が今取り組んでいて、将来的に研究していきたいのは、通貨統合は必然的に政治的統合を必要としているのか、ということです。例えば、10-20年後のヨーロッパは、通貨を統合したことで結局一つの国にまとまってしまうのでしょうか。あるいは、一つに成れないがゆえにユーロ圏が瓦解していき、マルクやフランといったかつての国民通貨が復活するのか。または、ドイツについていけるベネルクス3国(ベルギー・オランダ・ルクセンブルクの総称)などの少数の国が一つの国に統合されてユーロを使い続け、他の国々はユーロ圏から抜けていくのか、というようなところを考えていきたいなと思っています。これが向こう5、6年の目標です。

 政治的統合とは、なかなか定義が難しいのですが、具体的に言うと政策統合がこれに含まれると考えています。例えば、財政政策は、基本的には国の政府が国民の受託を受けて決まるものです。しかし、今のヨーロッパは、そこまで各国政府が自由にお金を使えないようになっています。例えば、「財政赤字の金額はGDPの3%以内に収めなければいけない」や、「今まで積み上げてきた政府の借金の総額は、GDPの60%以内に収めなければいけない」など、政策面では最初からかなり縛りがあって、自由に政策を作れません。このように、各国国民の要望に関わらずある種のスタンダードに合わせなくてはいけないというのは、政治統合の一つと言えます。それから、なんと言っても、外の国に対して共同のアクションを取ることが、政治統合という言葉にぴったりなのかなと思います。具体的には、軍事などの側面での統合も考えられます。将来的にはヨーロッパ軍みたいなものができてくる可能性もあります。これらの二つ以外にも、政治統合というのはもっと色々な現象を含むと思いますが、今回はこれらを具体例として挙げるにとどめておきます。

 

 

学生時代はどんな学生でしたか?

 学部生時代は、優等生では全くありませんでした。先ほども言ったように、文学部英文学科に入学したのですが、英文学に興味を持っていたのは最初の半年くらいで、哲学や、社会思想、数学にも興味を持った時期もあり、最終的に経済学に興味を持ちました。だから、もう自分の興味の赴くままに、自分のやらなくてはいけないこと(=英文学科の卒業に必要な科目)と違う事をやり続けたため、英文学科の単位はあまり取っていませんでした。4年生の時に、履修上限の単位まで入れないと卒業できない状況になっていて、最後に帳尻合わせのためにすごくまじめに英文学科の授業に出ました。明学は、他学部の授業を取っても自分の学部の卒業単位にほとんど組み込めないという、少し珍しい大学ですが、当時僕の行っていた大学は、他学部の授業もある程度は卒業単位に換算できました。ですが、なぜか僕はそういうことをしませんでした。だから、本当に英文学科の4年生の時は大変でしたよ。ですが、それらの時間が無駄だったとは思っていません。そういう学生でしたので、英文学科の成績はかなり悪かったと思います。経済学の大学院に行く時に、もし文学部時代の成績を問われていたら、結構厳しかったんじゃないですかね。でも、経済学を勉強しようと決めて経済学部に学士入学してからは,経済学部の授業にしっかり出席しました。とにかく楽しかったです。

 

 

学生の間に読むべきオススメの1

 文学部の時に授業で先生が、「そういえば、この間こんな本を読んだんですよ」と、授業と全然関係ない本を紹介してくれて、学生の頃はそういった本を結構読みました。だから、僕がここで一冊というよりは、僕の授業でもそうしていますけど、授業で色々な本を紹介されると思うので、ぜひ、特に授業と関係のない本などを手に取って、読んでみるといいと思います。例えば、何を読もうかなって考えた時に、どこからはじめればよいかわからないと思うのですが、せっかく大学の授業に出ているんだから、授業で紹介される、特に授業に関係のない本を読んでみると良いのではないかなと思います。僕はそこからかなりたくさん面白い本を見つけましたよ。特に、当時上智大の英文学科には、保守派の論客として有名な渡部昇一先生(1930-2017、英語文法史、上智大学名誉教授)がおられました。渡部先生は、個人の書庫を持っていたくらいの読書家で、授業中も、自分が若い頃に読んでいた本の話を頻繁にしてくださいました。先生が紹介してくださった本はかなり読みましたよ。保守思想の持ち主として有名な先生でしたが、紹介してくれた本は思想色のないものが多かったように思います。だから、国際の学生の皆さんも、大学の授業で紹介される、特に授業に関係のない本を読んだらいいと思います。大学の授業は、そのような利用の仕方もあるのではないでしょうか。

(取材日:2018/11/20)

 

 

〇岩村 英之(いわむら ひでゆき)国際学科准教授

地域統合の政治経済分析(欧州連合のような主権国家間の政治経済統合)。

東京大学新領域創成科学研究科国際協力学専攻博士課程修了。国際協力学博士。名古屋商科大学マーケティング学部専任講師や同大学経済学部専任講師を経て2009年に明治学院大学国際学科に着任。

主な論文に「通貨同盟における財政規律:政府債務の波及効果とモラル・ハザードの視点から」(2015)『国際学研究』第47号、“Welfare Analysis of Currency Union”(2009), Review of International Economic Studies, 27がある。

 

▽先生のサイト

http://hide-iwamura.sakura.ne.jp/website/