取材日:2023年10月2日
▽なぜ明治学院大学の国際学部に入学しようと思ったのですか。
私は若い頃から、海外に対して憧れがあったからです。当時英語が好きで、国際学部は海外留学や英語を生かせる場面が多いなと思い、入学を決めました。私の兄がオーストラリアへ交換留学に行ったことや、ホームステイ先として自宅に外国の方を迎え入れた経験もあり、海外に興味を抱きました。
▽なぜ留学をしたいと思ったのですか?
学生時代はテニスに力を入れていたので、留学をしたいという気持ちはあまりなかったです。その時の私は、TOEFLなど英語の試験のスコア向上のために使う時間を多くするより、「部活をしたい」という思いが強かったですね。しかし三年ちょっと部活動を行い、引退した後に「ちょっと待てよ、僕の大学生活はテニスしかしてないな」とふと我に帰った瞬間がありました。その時に、私は「あっ!ワーキングホリデーに行こう!」と思い一年間休学をして、ニュージーランドへワーキングホリデーをしに行きました。
▽海外に行ったときに、日本人は自分の国のことを知らないとよく言われていますが、熊野さんはそう思われていますか?
おっしゃる通りです。私もそうでしたし、今でもそう思います。留学中の私のホームステイ先がクリスチャンだったので、よく「神道と仏教の違いって何ですか?」や「なぜ日本人はクリスマスをお祝いするのですか?」と聞かれました。私は海外に行くまで、日本のことを好きとか嫌いとか考えることがありませんでした。日本を自分が生まれた国としか考えたることがなかったです。しかし海外に行ったことで、「あっ、日本ってすごいじゃない?」と気づき、私は日本を海外の人に、もっと知ってもらえるようなことをやりたいなと思うようになりました。
▽その経験は、今のご職業につながっているのですか。
はい。つながっています。私はニュージーランドのワーキングホリデーから帰ってきて、すぐに就職活動をしました。最初は誰もが知るJETRO(日本貿易振興機構)、JICA(国際協力機構)などを希望していましたが、調べていくうちに今勤めているJNTO(旧国際観光振興会)の存在を知りました。私はニュージーランドでの経験から、まさに自分がやりたいことがこれだと思い、入社しました。
▽ご職業について、詳しく教えてください。
1964年に設立された日本政府観光局(JNTO(Japan National Tourism Organization))は、現在海外に25か所の事務所を持ち、海外の旅行客を日本に誘致するインバウンド専門の団体です。日本政府観光局(JNTO)という名称はあまりなじみがないかもしれませんが、例えば韓国なら韓国観光公社、タイならタイ国政府観光庁といった機関が各区ににあり、自国への旅行客の誘致活動を行っています。
JNTOでは訪日客数の増加のための取り組みだけではなく、外国人が日本で消費する額を増やしたり、地方経済の活性化のために地方への誘客を進めたりしています。
▽熊野さんが所属されている企画総室はどのようなことを行っているのですか?
企画総室はJNTOにおけるマーケティングの方針を考え、各部署が同じベクトルでプロモーションを行えるよう主導する役割を担っています。また観光に対する行政の取り組みは観光庁と我々JNTOだけではなく、各省庁、地方自治体等が行っています。企画総室ではそうした関係者の活動をとりまとめて、海外に発信するということをしています。
▽熊野さんが今まで考案された企画の中で、「これ良かったな」と思えるようなものは、何なんですか?
色々ありますが、日本のゴルフ場を韓国にPRしたことです。韓国はゴルフがすごく人気にも関わらず、ゴルフ場の数がすごく少ないです。韓国の土地は日本の4分の1程度で、韓国国内にあるゴルフ場の数は千葉県にあるゴルフ場の数と同じくらいしかないです。私はこの需要と供給のアンバランスに着目し、「韓国の方に日本へ来てゴルフを楽しんでもらったらどうだろうか」と考え、韓国と近い九州、四国のゴルフ場の優位性を韓国にPRしました。その結果、日本へのゴルフ客が大幅に増加しました。
▽熊野さんが感じている観光の課題は何でしょうか?
インバウンドによる経済効果を全国津々浦々に波及させることです。日本を訪れる外国人の多くはゴールデンルートと言われる名古屋、京都、東京、大阪お訪れることが一般的です。そのためオーバーツーリズムといった現象がみられる地域もあります。
こうした外国人観光客をゴールデンルート以外の地方に訪問してもらうことが課題であると考えています。地方では現在の人口や経済・雇用を維持していくことが難しくなっているので、その支えとしてインバウンドが果たす役割は大きいと思います。
私が入社した当時のJNTOは、訪日客数や経済効果よりも国際交流に重きを置いていました。当時はバブルの影響もあり、海外のお客様に頼らずとも日本の経済は絶好調でした。しかし現在は、日本には主たる成長産業があまりない印象です。だからこそ、私は「観光」から日本の経済を循環させることが重要であると考えます。
▽国際学部生に対して、伝えたいメッセージをお願いします。
色々な経験をしてください。学校だけにいてはだめです。社会人になると、自分の仕事に時間を取られてしまいます。 今のうちに色々な体験をして、色々な人と話して欲しいと思います。今自分だけが見ている世界が全てではありません。自分の居心地の良い場所だけにいるのではなく、外に出て自分の殻を破ってください。
▽あなたにとって国際学部とは?
今思えば、国際学部があったからこそJNTOという道が開けたと思うので、そういうきっかけづくりができた場所だと思います。
○熊野 伸彦
1990年に明治学院大学国際学部国際学科入学。在学中は、体育会庭球部所属。ニュージーランドへワーキングホリデーを経験。現在は、日本の魅力をより多くの海外の方に伝えるために、日本政府観光局に新卒から勤務。
