▽学生時代はどんな学生でしたか?

 語学のクラスで読書会をしたり、ガリ版刷りの週刊新聞をつくったり、休みには合宿をしたりしていました。そこそこ似たもの同士だった高校までと違い、全国から大学に集まってきた同年代の学生は実に多様に感じられ、面白かったです。まだまだ自分の世界が狭かったということですけれども。

 そして公害研究のサークルで活動し(当時は公害が本当に大変でした)、仲間たちと、しょっちゅう足尾銅山跡や、製紙工場排水によるヘドロに悩む田子の浦、喘息患者が多数発生した川崎などへ現地調査に行きました。「飯は抜いても本は買え、飯は抜いても(現場に)行ってみろ」を実践したわけです。

 また、ぼくが大学一年生だった1973年に母校の都立高校で放火事件が起き、翌年これが冤罪事件だと知って、裁判支援に関わります。無罪と国家賠償を勝ち取った「富士高放火事件」は、ウイキペディアにも載っています。この事件は犯人とされた定時制高校生への重層的な差別が関わっており、警察による「犯人でっち上げ」なんてことが本当にある、ということや、こういうとき高校の教員たち他、周りの大人はこんなふうに動くのか、等々、とても社会勉強になりました。法律家志望が多かった公害研究のサークル仲間も、裁判支援を助けてくれました。

 空中分解してしまいそうなのを、応急修理しながら何とか飛行を続けている、と当時、自嘲気味に言っていたような、忙しい学生時代でしたが、それやこれやで悩んだり、もまれたりしなかったら、もっとつまらない大人になっていただろうと思います。大学時代のサークル、クラスやゼミの友達、そして裁判支援に関わった先輩たちには、今も感謝しています。

 

 

▽大学ですべき事は何ですか?

 やっぱり友達、仲間をつくって、睦み合い刺激し合うこと、じゃないでしょうか。他方、ときには、たった一人でじっくり考える、ということも大事です。

 それは自分らしさをつくる、ということでもあるでしょう。他者との交わりの中で、その人の「人格」がつくられるので。

 そして、自分はこう生きたい、こういう生き方は絶対したくない、という自分なりの信念をつかむこと、それが大切です。時代に流されてしまわないために。

 

 

▽学生の間に読むべきオススメの1冊

 名作とされる長い小説を、時間のある学生のうちに読むことを薦めます。特に主人公が成長する様が描かれているものを。例えば、ロジェ・マルタン・デュ・ガールの『チボー家の人々』(白水Uブックス)。学生時代は、自分がどのように生きるべきか、悩む時期ですが、そうした基本的なことを考えるための栄養になってくれるはずです。また、この小説の終盤は、第一次世界大戦(1914-1918)が舞台で、あの時代を当時の人がどう受け止めていたかを想像するのにも役立ちます。人間を知る縦軸が「歴史」だとすれば、横軸が「文学」です。映画も悪くないけれど、やはり小説は自分のペースで読めるところが、いいですね。

(取材日:2018/12/15)

 

 

〇高原 孝生(たかはら たかお)国際学科教授

軍縮問題の史的展開/核時代の平和の条件

東京大学法学部を卒業し国際政治学の助手となる。川崎地方自治研究センター、立教大学を経て、1985年から明治学院大学に着任。国際学部の創立メンバーの一人。現在、教授として、国際政治学、平和研究を担当。戦後国際政治の中の核問題、および安保、沖縄といった戦後日本の平和問題を追ってきた。平和研究の第一人者であり、編書に『戦争をしないための8つのレッスン』がある。